【書評】『「学力」の経済学』中室牧子 科学的根拠をもとにした子育て・教育方法を紹介

「子育て方法が合っているかか不安だ」
・「間違った方法で子育てをしたくない」

このような悩みを持ちながら子育てに奮闘されている人は多いのではないでしょうか?

誰しも大切な子どもには正しく効果的な教育をさせてあげたいものです。

筆者の家庭でも1歳過ぎの娘がいますが、今後幼稚園、小学校と大きくなったときの教育方法を明確にしておきたいと考えていました。

そんなときにたまたま書店で見つけたのが『「学力」の経済学』というタイトルの本です。

多くの子育て世代の参考になるとても面白くて興味深い本でしたので紹介したいと思います。

目次

本から得られるもの

「学力」の経済学というタイトルは一見堅苦しく難しそうな題名ですが、中身は大規模なデータをもとに経済学の手法を用いて最適な子育て方法について説明されており、経済学をわからなくても簡単に読み進めることができます。

どこの誰かわからない人が言っている教育方法ではなく、科学的根拠をもって子育て方法や教育方法について説明されているところがポイントとなっており、子育てに取り入れたくなる考え方を多く学ぶことができます。

その中でも筆者が特に面白い!興味深い!と思ったポイントを3点紹介させていただきます。

①子どもをご褒美で釣ってはいけないか?

子どもに勉強をさせるためにご褒美をあげることはいけないことなのか?

感覚的には良くないと思ってしまう人が多いのではないでしょうか。

  • ご褒美をあげないと全く勉強しなくなるのでは?
  • 自らの意思で勉強をする気持ちが無くなってしまうのでは?

このような不安からご褒美をあげることをためらってしまいます。

しかし実際にはご褒美をあげることで子ども自身が「勉強することは楽しい」というような好奇心や関心が失われることはないことが統計的に確認されているとこの本では言われています。

またご褒美のあげ方にもポイントがあります。

  1. テストでいい点を取ったらご褒美をあげる
  2. 本を読んだらご褒美をあげる

この2択だとどちらが効果的に思えますか?

本を読むことでご褒美をあげたとしてもテストの結果が良くなるとは分からないので、テストの結果が良かった場合にご褒美をあげた方が効果がありそうと思いました。

しかし結果は逆で本を読んだらご褒美をあげるという「インプット」に対してご褒美をあげるやり方がより効果的なようです。

そんなご褒美の上げ方で勉強させて本当に大丈夫なの??

子どもにとってはテストでいい点を取ろうと思ってもいざ何をすればいいか、どう勉強すればいいかということが分かっていないので、本を読むというようにやることが明確なことに対してご褒美をあげる方がテストの結果がよくなるようです。

親にとってみればご褒美をあげるとどこか負けてしまったような気がして、ご褒美をあげずに勉強をさせたいと思ってしまいます。

しかし全然勉強しない、言うことを聞かない子どもに対して勉強をさせるのは至難の技です。

科学的根拠にもとづきご褒美が子どもにとって悪い影響を与えないのであれば、ご褒美を効果的に活用することで勉強を促すことはありなのではないでしょうか。

それによってテストでいい点を取ることができれば子どもの勉強に対する気持ちや考え方が変わるかも知れません。

また子どもに勉強のやり方を身につけさせることができると考えるとやってみる価値はありそうです。

②テレビやゲームは悪影響?

テレビやゲームが子どもにとっていい影響を与えると考える親はほとんどいないと思います。

小さい時からテレビを見過ぎない、ゲームをしすぎないように言われ続けて育ってきた筆者も同じようにテレビ・ゲームは子どもにとって悪影響で、ないに越したことはないと考えていました。

しかし本書によると1時間程度のテレビやゲームであれば子どもにもたらす悪影響ないと言われています。

ここでポイントとなるのが相関関係と因果関係です。

相関関係とは?

一方が変化するともう一方も変化する関係のこと

ex.テレビやゲームを利用する子どもは学力が低い傾向がある

因果関係とは?

原因と結果のつながりがある関係のこと

ex.テレビやゲームを利用することによって学力が低くなる

この2つの違いは重要です。
ただ相関関係があるだけであれば学力が低い子ども達の生活習慣にはテレビやゲームをよく利用しているだけとなりますが、因果関係の場合はテレビやゲームを使用することによって学力が低くなる、ということになります。

テレビやゲームが子どもに悪影響であるということは因果関係が成り立つ必要があります。

しかし本書によるとテレビやゲームそのものが子ども悪影響をもたらすという因果関係は大きくなく、むしろ教育番組を見ることや難しいゲームをすることでいい影響すらあると言われています。

テレビやゲーム自体によって子どもの学力に影響することはありませんが、長時間テレビ、ゲームを利用するような生活をさせている子どもの学力が良くないという相関関係はあるため、時間を守る習慣を付けさせることが大事なようです。

とはいえゲーム大好き少年であった筆者にとってみれば1時間でスパッとキリよくゲームを終われなんてことはほとんどなく

今いいところだからあと10分だけ

といったように時間を守らないことは多々ありました・・・

小さいうちから時間やルールを守る習慣をつけさせ、テレビやゲームに限らず長時間ダラダラと過ごすことのないようにさせることが大事ですね。

③勉強しなさい!は無駄?

勉強しない子どもに対して親は「勉強しなさい」とついつい言ってしまいます。

しかしこれも効果がなく、むしろ逆効果になってしまうようです。

子どもの学習に対する親の関わり方を研究した結果によると

  1. 勉強をしたか確認している
  2. 勉強を横について見ている
  3. 勉強する時間を守らせている
  4. 勉強するように言っている

この4項目の中で子どもの学習時間への影響が最も効果がなく、ときに逆効果になってしまうのが4番の「勉強するように言っている」のようです。

言われてみれば子どもの頃親から「勉強しなさい」と言われて素直に勉強しようと思った記憶はなく、むしろうるさいと思ってしまい、やる気を削がれる経験を何度もしていました。

「勉強しなさい」と言うだけなので親にとっては楽なのですが、子どもの学習時間を伸ばす効果がないことは納得ができます。

その一方で2番の「勉強を横について見ている」や3番の「勉強する時間を守らせている」と言った親が時間や労力を必要とする項目では子どもの学習時間が伸びる結果となっています。

子どもに勉強させるためには親も時間や労力を惜しまずに、しっかりと子どもに付き合ってフォローする必要があるようです。

我が家は共働きだから夫婦どちらもそんな時間は取れない

このような家庭の場合であっても、問題はありません。

子どもをフォローするのは両親だけでなく祖父母や兄弟、親戚などの同居人であっても効果があることが分かっていますので、無理に気負わずに借りれるフォローは借りても問題はないようです。

まとめ

『「学力」の経済学』という本についてご紹介しました。

紹介した項目以外にも多くの視点で科学的根拠に基づき子育てや教育方法について説明されています。

子育て方法について迷っている人やこれから子育てが始まる人にとって、参考になる本だと思います。

気になる方は手に取ってみてはいかがでしょうか。

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